[1か月単位の変形労働時間制]
■1か月単位の変形労働時間制においては、1か月以内の一定の期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲にて、1日および1週間の法定労働時間の規制にかかわらず、これを超えて労働させることができます。この制度を導入するためには、労使協定を締結して所轄労働基準監督署長へ届出を行う、あるいは就業規則などにその定めを記載しなければなりません。なお、その際、以下の点を要します。
・各勤務日ごとの始業・終業時刻を具体的に特定する
・変形の期間は1か月以内とする
・変形期間における法定労働時間の総枠を超えない
※法定労働時間の総枠=(週法定労働時間×変形期間の暦日数÷7)
・変形期間の起算日を明らかにしておく
■1か月単位の変形労働時間制を採用した場合でも、以下の時間については、時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります。
1 1日の法定労働時間外労働
労使協定または就業規則などで1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
2 1週の法定労働時間外労働
労使協定または就業規則などで1週40時間(特例措置対象事業場については44時間)を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は1週40時間を超えて労働した時間(1で時間外労働となる時間を除く)
3 対象期間の法定労働時間外労働
対象期間の法定労働時間総枠を超えて労働した時間(1または2で時間外労働となる時間を除く)
[1年単位の変形労働時間制]
■1年単位の変形労働時間制においては、業務に繁閑のある事業場などにて、繁忙期に長い労働時間を設定し、かつ閑散期に短い労働時間を設定することにより、効率的に労働時間を配分することができます(1か月を超え1年以内の一定期間を平均し1週間の労働時間を40時間以下の範囲以内にした場合、特定の日や週について1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができます)。
この制度を導入するためには、労使協定を締結し、1か月を超え1年以内の一定期間を平均し1週間の労働時間を40時間以下の範囲にすることなどの条件を満たした上、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。なお、労使協定では、以下の点につき、協定を締結する必要があります。
・対象労働者の範囲
・対象期間(1か月を超え1年以内の期間に限ります)および起算日
・特定期間
・労働日および労働日ことの労働時間
・労使協定の有効期間
また、以下の点につき、留意を要します。
1 1日の所定労働時間の上限は10時間、1週は52時間以内であること
2 対象期間が3か月を超える場合は以下の条件を満たすこと
・所定労働時間が48時間を超える週は、連続3週以下であること
・3か月ごとに区分した各期間における所定労働時間が48時間を超える週の初日は3回以下であること
3 連続して労働させることのできる所定労働日数は6日を限度とすること
4 特定期間の連続所定労働日数は、1週1日の休日が確保できる日数であること(すなわち12日が限度となります)
5 対象期間が3か月を超える場合の所定労働日数の限度は1年あたり280日であること(対象期間が3か月を超え1年未満の場合は280×(対象期間の暦日数÷365)
※年少者については、原則として1年単位の変形労働時間制で労働させることはできません(ただし、1週48時間、1日8時間以内であれば可能です)。また、妊産婦が請求した場合には、1週40時間、1日8時間の範囲以内でしか労働させることはできないため、1年単位の変形労働時間制にて労働させることは不可となります。
※特例措置対象事業場について、1箇月単位の変形労働時間制及びフレックスタイム制を採用することはできますが、1年単位の変形労働時間制または1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用する場合には、週40時間でなければなりません。
[フレックスタイム制]
■フレックスタイム制においては、あらかじめ1か月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間を決め、その範囲内で労働者自身が各労働日の労働時間を決めることができます。特に研究開発業務やデザイン関係の業務など、労働時間を画一的には決めないほうが効率的とされる事業場に導入されています。会議や打ち合わせなど必ず出勤しなければならないコアタイムを設けるている例が多いのですが、コアタイムを設けない完全フレックスタイム制も可能です。なお、導入にあたっては、就業規則などに始業および終業の時刻をその労働者の決定にゆだねる旨、定めなければなりません。また、労使協定にて、以下の点につき、協定を締結する必要があります。
1 対象となる労働者の範囲
2 清算期間
3 清算期間における起算日
4 清算期間における総労働時間
5 標準となる1日の労働時間
6 コアタイム(定めた場合のみ)
7 フレキシブルタイム(定めた場合のみ)
■フレックスタイム制において、清算期間が法定労働時間を超える場合、時間外労働となります(清算期間が1か月で、完全週休2日制を実施している場合、清算期間の労働時間が法定労働時間を超えても、特別な取扱いができるケースがあります)。また、働いた時間が清算期間の総労働時間に満たない場合、不足時間分の賃金を控除することに代えて、不足時間を翌月の所定労働時間にプラスすることもできます(反対に超過した時間を翌月で調整することは不可です)。
※年少者については、フレックスタイム制は適用しないこととされています。